1/17/2012

なつかしい芸人たち


一般的にはたいていの人、とりわけ女性には「若い>年寄り」という認識がなされているのだと思うけれど、しかしそこはそれ、ブルースやらソウルやらロックやら、はたまた映画やら演芸やらを愛好する私たちはその逆で「年をとっている」ことに少々優越感を持ったりすることがままある。(え、そんなことないですか?)

なんといっても昔のことを知っていることはエライという価値観の世界だ。
おませな好事家のみなさまは“若い”ということを、あからさまではないにしても、ちょっと馬鹿にされたという経験をお持ちではないだろうか。(誰々の初来日見てないの?とかね)
そんな経験を何度かするうちに気がつけば「年が若いコンプレックス」を抱いて青春時代を送っていた、なんてことになるのだ。

そんな歪んだ(?)コンプレックスと大いなる憧れを持って読みたい本がこれ。

「決定版 私説コメディアン史」澤田隆治




















澤田隆治は「てなもんや三度笠」「スチャラカ社員」「花王名人劇場」などのヒットを生んだ名プロデューサー。昭和のお笑い史そのもののような人だ。
エンタツ・アチャコ、藤田まこと、やすし・きよし・・人気者を内側から見せてくれてわくわくする。


そしてさらに超ディープな世界に誘ってくれるのがこれ。

「なつかしい芸人達」色川武大





















立川談志が兄(アニ)さんと呼んで慕い「兄さんには芸人とおンなじ哀しさを感じる」と言った色川武大の芸人話。
といっても話はコメディアン、映画俳優、歌手、野球選手から相撲取りにまで及ぶ。

データ的なものはあまり重要視されておらず、自分の少年期を振り返りながら時に感情移入しながら、溢れるような固有名詞、連鎖する記憶、芸人への深い愛情を徒然語っている。
読んでいると色川武大になつかしい(というにはあまりにマイナー、怪しい!)お話を聞かせてもらっているような気分になれる。

それにしてもこの全編を覆ういかがわしさ、哀しさはどうだ。戦前戦中の芸人達。「河原乞食」という言葉が浮かぶ。



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先ごろ立川談志が亡くなった折、その追悼記事に演芸評論家のお歴々は揃って「こゑん時代(二つ目)は凄かった」とお書きになっておられた。
あぁやっぱり、こゑん時代。とんでもない天才ぶりだったらしいからなぁ。見てみたかったです、そりゃあ。(生まれてないけど)

私は既に「若い」と軽んじられる年齢は過ぎているし、談志の50代半ば以降はいわゆる追っかけ、高座は鼻血が出るほど聴いた。それを密かな自慢としていたが、それも急に色褪せて見える今日この頃。

ああ、マニアの世界には限りがない。
早く70歳になりたい。


今週の当番No.3 bunyayurisses

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